納得いかない理由で、ペットの返還を求められたら?
しかし元親様からの過度な干渉により、平穏なペットライフが妨げられるケースがあります。
ここでは犬・猫の里親譲渡後に元親から受ける過度な干渉について、専門行政書士が丁寧にご説明します。
この記事が、皆様のペットトラブル解決のお役に立てば幸いです。
元親による過干渉とは?
まず元親による過干渉とは、ペットの里親譲渡後に受ける過度な関わり合いなどを指します。
毎週写真付きで連絡をしてくれ!と言われたり、そんなご飯ではだめだ!と、飼育方法に対して必要以上に口を出してくるケースなどが挙げられます。
これらは法律用語ではありませんが、モラルハラスメント、パワーハラスメント、心理的・身体的虐待などの一種とみなされています。
例えばこの過干渉を受けられている里親様の多くは、以下の内容にお悩みです。
元親による過干渉の種類
- ペットの日々の飼育状況の写真請求
- 頻繁なペットとの面接要求
- 自宅への抜き打ち訪問
- 厳格な散歩・食事・飼育方法の指定
- 過度の検診の推奨と、動物病院の指定
それは愛犬・愛猫がいないことの寂しさや、里親・元親間の人間観のトラブルなどが原因となります。
そしてこれらの干渉は、譲渡契約書を締結して正式にペットを譲り受けた場合であっても、「正しく飼育されていない」などを理由として、飼育方法の提案や飼育改善を求められる場合があります。
そして過干渉の最大の問題点は、飼育環境が適していないことを理由とした、曖昧な理由による譲渡ペットの返還請求です。
これは里親トラブルでも早急な対応が必要なケースであり、「法的な主張」と「感情面への配慮」の二つに働きかける必要があります。
そしてこの過干渉トラブルを穏便に解決するためは、まずその性質から理解する必要があります。
過干渉の原因
その感情には強弱があり、元親が譲渡後に抱える不安に由来するものと、個人の思想や性格が反映されたもの等があります。
まずはそのうちの一つ、元親が抱える心配な気持ちを見てみましょう。
元親の心配に基づく過干渉
- ペットが飼育放棄されていないか
- 里親詐欺ではないか
- 里親のペットに対する感情に変化はないか
- 自分の環境が一番だったのではないか
特に譲渡する里親様が犬・猫の飼育が初めての場合や、元親の病気などを理由とした里親譲渡などに多く見られます。
同時に大切な愛犬・愛猫に対する里親詐欺への警戒心も、大きな理由となり、その結果として過度な干渉に繋がっているケースが散見されます。
ご覧の様に、全ての過干渉が一概に問題であるとは言い切れず、里親様を困らせてやりたい!という類の干渉ばかりではないと言うことです。
そのためこの種類の過干渉に対応するには、元親様の不安を和らげる以下の配慮が効果的です。
元親の不安を和らげる配慮
- 具体的なペットの面会頻度を定める
- 譲渡契約書を正式に締結し、その中で飼育報告の条項を設定する
もし譲渡契約書を正式に交わしていない場合、これらの条件を盛り込んだ内容で正式に締結する方法も効果的です。
ただしその場合にも、面会頻度や方法を明確に設定しておかなければ、ペットの返還を請求される譲渡条件と見なされるでしょう。
同時にペットとの面会機会を過度に設けてしまうと、元親様の愛情が再燃する恐れもあります。さらに元親様によっては何とか取り戻したいと考え、飼育環境がそぐわないことを理由とした返還を求める場合も散見されます。
上記の配慮は元親様の不安を払しょくする意味合いを持ちますが、バランスの良い設定が必要と言えるでしょう。
元親側の不安や心配は、実際には面会を設定しても治まらない場合があります。前述のように、むしろ我が子に一目会うと、どうしても返還して欲しい気持ちになるケースも見られます。
特に近隣にお住まいで頻繁に面会させられない場合には、はっきりとその旨をお伝えすることも大切です。前述のペットとの面会等の設定は、根本解決にならない可能性も考慮すべきです。
その場合には、前述の過干渉よりさらに慎重な対応が求められます。
個人の思想や性格に基づく過干渉
- 譲渡後も飼育の主導権を持ちたい
- 極端な動物愛護思想
- ボランティア団体としてではなく、個人の思想
- 動物愛護者として自身が秀でていることの主張
そのため譲渡後の飼育方法は、本来、里親が干渉を受ける要素ではありません。
にもかかわらず、元親より返還を始めとした様々な請求が行われる場合があります。
それは譲渡契約書に記載された「大切に飼育すること」などを広義的に捉え、飼育方法が譲渡条件に違反していると指摘しやすい譲渡条件になっているためです。
この点からも、譲渡契約書における「曖昧な譲渡条件」は非常に危険です。体感的に「干渉が強そうだな」と感じたら、明確な譲渡条件を設定するべきでしょう。
それには元親様が求める飼育方法は、具体的にそのやり方を定め、その他の飼育方法は「里親側に一任する」などと表記する方法です。つまり可能な限り指摘される要素を減らし、より具体的な譲渡条件を定めると言う事です。
参照:ペットの里親と交わす譲渡契約書の詳細な書き方と結び方(文例付き)
元親の意思で譲渡を決定した以上、里親を信頼して譲渡すべきでしょう。少し厳しいようですが、里親譲渡時にその旨をはっきりとお伝えになる方も少なくありません。
元親の過度な思想に基づく干渉の多くは、論じて解決するとは限りません。時には今後連絡を取らない前提で、自分の意思を伝えることも大切です。
勿論その場合には、少なからず衝突があるでしょう。そのため大切なのは、その衝突を出来るだけ抑えつつ、具体的な請求を筋道立てて伝え続けることです。
参照:犬・猫の里親譲渡を決める前に確認する3つの重要事項
:愛犬・愛猫の安全な譲渡にむけた重要事項チェックシート
また以下は主に今後過干渉の恐れがある場合の問題点のため、既に過干渉にお悩みの方は読み飛ばしていただいて構いません。
過干渉の問題点
- 里親の生活スタイルに合った飼育ができない
- 定期報告などの過度の負担がかかる
- 地域のサービスを選択できない
- 里親が飼育自体に不満・不安を抱き始める
- 引っ越しや転職などに踏み切れない
これらは元親と言えども、第三者がペットライフに介在することにより生まれる弊害です。
かかりつけの動物病院や散歩コース、ドックランや食事やお気に入りのおもちゃなど、嗜好も次第に定まります。
遠距離の動物病院を指定された場合などでは、急病時の柔軟な対応も難しくなり、散歩方法や時間を指定された場合は、仕事や生活のバランスも大きく崩れてしまいます。
また過干渉によるストレスで、飼育自体に前向きになれない悪循環にもなりかねません。
これらの理由からも、元親に対する過干渉に関しては適切な対応が必要です。
簡単にご作成いただけるダウンロード版
過干渉に対する効果的な4つの対応策
これらには以下の解決策があります。
- 1. 所属するボランティア団体に連絡する
- 2. 内容証明郵便で意思を伝える
- 3. 正式な譲渡契約書を作成する
- 4. 里親譲渡の紹介機関に相談する
所属するボランティア団体に連絡する
その場合は団体としての方針を伺い、以下の内容をお伝えしましょう。
- 今までの干渉の内容
- 過干渉と考える理由
- 最初の譲渡条件との比較
- 今後の団体としての意向
- 団体経由で当該個人へ干渉中止を伝えて欲しい旨
同時に正当な理由によらない過干渉に対しては、今後一切の連絡を拒否する意思表示も効果的です。
里親譲渡の紹介機関に相談する
もしかしたら該当の元親が、以前にも過干渉で問題になっているかもしれません。
その場合は元親への事実確認、時には何かしらアクションしてくれる場合もあります。
ただし具体的な問題が発生していない場合には、何もできないと仰られるかもしれません。
その場合でも、根気よくご相談されると良いでしょう。
ボランティア団体様の場合、団体間の所定のネットワークをお持ちの場合があります。
時には別団体からの注意勧告をお願いするケースもありますが、団体間の確執を避けるため積極的な介在はしていただけないでしょう。
内容証明郵便で意思を伝える
これは内容証明郵便を活用して、ペットの所有権が既に自分にあり、飼育方法などの過干渉に対する指摘・拒絶の意思を伝える方法です。
その内容証明郵便に記載する内容は、以下から選択すると良いでしょう。
- 過干渉に対する拒絶の意思
- 返還・過干渉を拒否するな法的根拠
- 譲渡時の条件との相違点
- 中止しない場合には法的処置を検討している旨
- 今後、一切の接触を拒否する旨
内容証明郵便を利用する際は、その文面を慎重に選択しなければなりません。
それは、思いがけず自分自身に不利な内容を記載してしまう可能性があるからです。
例えば内容証明郵便に記載した内容は、自分でも事実と認めていると判断されかねません。
結果として、元親側に有利な条件を引き出してしまうことも少なくないのです。
参照:ペットトラブルでの内容証明郵便の作成方法と送付マニュアル
その場合は「適正な飼育をしている以上、所有権の主張は無効である」と主張します。
またペットを勝手に持ち帰ろうとした場合、自力救済の禁止に当たる可能性があります。
これは法の整備が敷かれている現代では、権利を行使するには法の手続きを踏むべきだとされているからです。
自力救済の禁止私人が法の定める手続を使うことなく、自分自身の権利を実現・達成することを禁止する原則のこと
※今回であれば、譲渡条件の違反を理由に自ら強制的に返還させることを認めない、ということ
正式に譲渡契約書を締結する
その場合「大切に飼育してね」という口約束違反を理由として、返還請求等が行われます。
そのため、具体的な飼育条件等を設定した譲渡契約書を、改めて締結するのです。
ただ、過干渉を拒絶するための具体的な根拠として、口約束が弱いのも事実です。
締結する譲渡契約書には、「干渉を受けないための条件」「返還は行わない旨」などの項目が効果的です。
実際は既に過干渉を受けている場合、正式な譲渡契約書の締結は至難の業です。
これは「ん?干渉が強くなってきたな?」と感じた段階に効果的な方法です。
既に干渉が始まっているのであれば、前述の内容証明郵便による意思表示が効果的です。