大切なペットの将来を守るための、里親譲渡。
その里親譲渡におけるペットトラブルは、思わぬところから発生します。
そんなトラブルを防ぐための、大切な注意項目はご存知でしょうか。
ここでは安全な里親譲渡に関する注意点について、専門の行政書士が詳しくご説明します。
この記事が、安全な里親譲渡のお役に立てれば幸いです。
里親譲渡に関するペットトラブルの種類
多くの里親トラブルは、一般的に以下の要素が原因です。
これらの3つの要素は、十分な事前確認によって回避できます。
ここでは、その事前確認で必要な「注意項目のチェックシート」をご用意致しました。皆様の里親譲渡の際に、ご活用いただければ幸いです。
では、それぞれの項目に関して、細かく見てみましょう。
里親と元親に関するチェックシート
まずは里親譲渡の相手方に関するチェックです。
これらは主に里親詐欺と飼育放棄を回避するためのチェック項目です。直接会話をすることで分かる要素や、メールやお電話での受け答えに現れます。
相手の人間性
- 初回連絡時から礼節があるか
- 質問に対する連絡時間・返答時間に問題はないか
- 譲渡まで定期的に連絡をいただけるか
- 単純に好意的か
- 過度の動物愛護精神を持っていないか
- 人間的な相性に問題はないか
そのため、やはり飼い主様同士の相性は大切です。最低限の連絡が気軽に取れそうか、感覚的ではあれ確認することは非常に大切です。
ときには「譲り受けてあげる」というスタンスの里親様もいるため、譲渡理由のヒアリングも重要です。
さらに初対面の時と譲渡後の態度が、大きく異なる場合もあります。最初は丁寧な態度であっても、譲渡後には一切の連絡を拒絶するケースです。
これは見抜きづらい要素ですので、譲渡契約書にて譲渡条件を明確にしておきましょう。
お互いの連絡先
- 住所・氏名・連絡先等の情報を開示してくれるか
- LINEなど連絡を取りやすい手段を使えるか
- 免許証などで身分確認をさせてくれるか
- その場で緊急連絡先に通じるか
緊急連絡先を伺う方法もありますが、干渉が強いとして嫌がられる可能性もあります。そのため、最低限必要な連絡経路に加えて確実に繋がるかをご確認ください。
LINEなどの簡便な連絡手段も有効ですが、プライベートの側面が強いツールです。これも断られる可能性がありますので、程よいバランス感覚を持つことが大切です。
譲渡理由と飼育経験
- 譲渡理由は何か
- 今までに飼育経験はあるか(里親側)
- 譲渡ペットに関する知識は最低限あるか(里親側)
ペットに関する知識をお伺いする場合、試験的な物言いは人間関係を崩しかねません。あくまでも最低限の知識を持ち合わせているか、お話の節々から確認すると良いでしょう。
同じ愛犬家・愛猫家として、同じ熱意を持たれている方をお選びください。
里親側のライフスタイル
- 一緒に飼育する方(ルームシェアなど)がいるか
- 定期的に自宅に帰れるお仕事か
- 転職・転勤の予定はないか
- 結婚に伴う同居の予定はないか
- 先住犬・先住猫はいるか
これはペットを継続して飼育できるかの判断材料であり、最も重要な確認事項の一つです。
お仕事内容や帰宅時間・出張の有無なども、生活スタイルを決定する大切な要素です。個人飲食店経営などの場合には、衛生面でペット飼育に適さないケースもあるでしょう。
また結婚に伴う同居や転居により、飼育が継続できない場合もあります。現段階で見通せる予定を伺い、継続飼育のための対策をお話し合いください。
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飼育環境に関するチェックシート
次に里親側の飼育環境を確認しましょう。
明らかに飼育環境が適さない場合には、再譲渡が必要になる場合もありますので、事前に以下の項目をしっかりとご確認下さい。
同居人・同居動物
- 本人・同居人に動物アレルギーはないか
- 先住犬・先住猫との相性に問題はないか
- 同居人の介護や治療の予定はないか
- ハムスターなどの小動物はいないか
中でも特に重要なのが、動物アレルギー反応の確認です。アレルギー検査は簡易的な皮膚検査は15分程度、本格的な血液検査の場合は約1週間で結果が分かります。
また、先住猫や先住犬との相性の問題もあります。
相性は譲渡後すぐに分かるわけではありませんので、相性を確かめる場合には里親譲渡のトライアル期間を設けると良いでしょう。本譲渡前の仮里親譲渡(トライアル期間)に関しては、以下の記事をご参照ください。
飼育場所の賃貸規約と近隣住民
- 飼育住居はペット飼育可能か
- 飼育可能賃貸でも、規約による頭数制限はないか
- その他、飼育条件等の縛りはないか
- 飼育条件に制約はないか
- 近隣に飼育を過度に問題視する人物はいないか
お住まいがペット飼育可であることは前提ですが、その場合でも賃貸規約で頭数制限の有無などの確認を行ってください。
ただこれらの項目は、元親様から里親様に対して確認しづらい内容です。そのため実際には、里親様がご自身の飼育可能を確認する項目として効果的です。
また近隣にペット飼育を過度に問題視する人物がいる場合、飼育方法やしつけ教室を検討することも大切です。細かな内容ですが、思わぬペットトラブルを回避する大切なポイントです。
近隣環境
- 極端に騒音が多い場所ではないか
子犬・子猫の譲渡の場合、周辺の道路工事や工場などの騒音に驚き、大きなストレスを抱える恐れがあります。道路工事など、騒音が一時的な原因によるものであれば、子犬・子猫の時期は譲渡を控えるなどの配慮が必要です。
その他、飼育環境周辺に動物病院があるかなどのチェック項目もありますが、100点を目指しすぎると里親譲渡自体が成立しない場合があります。バランスの良い譲渡をご検討ください。
経済状況・費用の試算の有無
- 飼育にかかる費用を事前に計算しているか
里親が初めてペットを飼育する場合、飼育にどれくらいの費用がかかるのか、まだ試算されていないかもしれません。その場合、どのくらいの飼育費用がかかっていたか、元親様からご共有されると良いでしょう。
もしその飼育費用が里親様の想定する金額を大きく上回っていた場合、飼育できないとご判断されるかもしれません。大変重要な情報ですので、あらかじめご共有されておくことをお勧めします。
譲渡後・譲渡方法
- ワクチン接種など各種手続きはどちらが行うのか
- 所有権の移転日はいつか
- 手渡しや空輸など、どのような譲渡方法を取るのか
次回のワクチン接種はいつなのか、飼い主としての責任が移転する日はいつなのか。譲渡期間中のトラブルの責任の所在を明確にしておきましょう。
これらは譲渡時にトラブルになりやすい要素ですので、譲渡契約書などに細かな内容を定めておくと良いでしょう。
譲渡契約に関するチェックシート
最後は、譲渡契約に関するチェック項目です。
譲渡契約書を締結できるか・譲渡記録を残せるか・返還条件を設定できるかなど、譲渡条件に関するポイントをチェックしましょう。
譲渡契約書の作成
- 契約書の作成・締結ができるか
- お話し合いで定めた譲渡条件が盛り込まれているか
- 譲渡日(所有権移転日)が明確か
- 譲渡日までの責任所在・費用負担が明確か
- 取り決め違反に対する返還条件は明確か
ペットトラブルの中でも多くみられる里親譲渡では、トラブルの多くが口約束での譲渡を原因としています。感情のもつれや飼育方針の違いは、明確な譲渡条件で回避すべきです。
それは大切なご家族をお守りする、有効な法的手段になります。より安全なペットライフのために、ぜひご作成をご検討ください。