ペット禁止賃貸でのペット飼育に契約解除が認められる場合
ペット不可賃貸で、犬・猫を飼育していたら?
すぐに契約は解除される?
ペット不可賃貸で犬・猫の飼育を行った場合、契約解除を求められる場合があります。

ただこの賃貸契約の解除が認められるには、貸家主との信頼関係の破壊が問題になります。

ここではペット不可賃貸で犬・猫の飼育をしていた場合の契約解除について、専門行政書士が詳しくご紹介します。

※2023年3月05日更新

この記事が、皆様のペットトラブル解決のお役に立てれば幸いです。


一方的な賃貸借契約解除が認められるには

ではまず、ペット不可賃貸で犬・猫を飼育していた場合、一方的な賃貸借契約の解除は認められるのでしょうか。通告や勧告無しで、撤去を命じられることなどあるのでしょうか。

まずこれには様々な状況により変化するため、一概にそうとも言えません。ここからは個別の状況に応じて、分かり易くご説明させていただきます。

まず賃貸借契約とは、継続的でかつ借主と貸主の信頼関係を基礎とする契約です。

そのため、賃貸契約を解除できる場合は非常に限定されており、一方的な解除が認められるには、借主の「無断転貸・無断賃借権譲渡」「債務不履行」などが必要と考えられています。

ではこれらの内容を、一つ一つ確認してみましょう。

無断転貸・無断賃借権譲渡による解除

まず賃貸借契約では原則、賃借不動産を無断で又貸ししたり、賃借権を無断譲渡することは出来ません。

もしこれらの事象が起きた場合、民法612条2項では賃借人(持ち主)は契約解除ができると定めています。

民法612条

1. 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない。
2. 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたとき、賃貸人は契約の解除をできる

ただこの場合でも、配偶者や子供を住ませることは転貸にならず、友人を一時的に同居させていた場合も転貸とみなされる恐れは少ないと考えられます。

つまり、何をもって無断又貸し・無断譲渡に当てはまるのか、個々の状況によって異なるということです。

では次に、契約当事者に求められる債務(義務)に関する内容も見てみましょう。

債務不履行による解除

債務不履行による解除とは、契約で定めた義務を果たさなかったことに対する解除です。

今回の「ペット不可賃貸での飼育に対する契約解除」は、こちらの要件が当てはまります。

もしペット不可賃貸で犬・猫の飼育を行った場合、通常の使用用途を逸脱していると考えられ、債務不履行に当たり、賃貸借契約の解除理由になり得ます。(民法541条)

ここで「なり得る」という表現に留まるのは、契約解除にはさらに別の要素も必要となるからです。

これらの全体を理解するためにも、まずは以下の基本条文をご確認ください。

民法541条

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をできる。

まず賃借人は賃借契約に求められる義務(賃料の支払いや定められた用途以外での使用)を果たす必要があります。

そしてペット禁止特約のある賃貸契約で犬・猫を飼育した場合、この法的義務を果たしていないと考えられます。

これは、本来想定されていた賃貸物の使用方法と相違することを理由とします。

さらにペット飼育が禁止されている場所における飼育は、近隣住民の動物アレルギーを引き起こす可能性もあり、強く問題視される傾向にあります。

ただし借主の「無断転貸・無断賃借権譲渡」「債務不履行」により、例外なく賃貸借契約の一方的な解除が認められるわけではありません。

実際には様々な要素により、解除が認められるかどうかが判断されます。
 

ペットトラブルでの信頼関係破壊の理論

前述のとおり、借りている人の義務違反により、すぐに一方的な契約解除が認められるわけではありません。

その違反が賃借人と賃貸人の信頼関係を破壊しうるものであると認められた場合に、一方的な契約の解除が認められるのです。(信頼関係破壊の理論

賃料未払いの場合には、1カ月だけでなく数カ月の未払いであること。

ペット飼育の場合には、ペット飼育の事実だけでなく、排せつ物による衛生面の悪化や鳴き声の騒音などの他の要素から、賃貸人と賃借人の信頼関係の破壊を判断します。

例えば、ペット飼育を中止する旨を何回も伝えたにも関わらず飼育を継続するなどの場合、信頼関係の破壊と見なされる要素があります。

ただ、平成7年7月12日の東京地裁による判例では、5年間苦情もなく飼育をしていたにも関わらず、ペット禁止特約に違反したことのみを理由とした、賃貸借契約の解除が認められています。

ペット飼育による契約解除の流れ

ペット禁止特約に反したペット飼育を行っていたことによる契約解除は、以下の流れが一般的です。

契約解除までの一般的な流れ

  1. ペット飼育の苦情や報告が賃借人や管理人に届く
  2. 飼い主に対して飼育禁止の催告(一定の請求)が行われる
多くの場合、まず最初にペット飼育に関する苦情・報告が管理会社に寄せられます。

その後、電話などで飼い主(賃借人)に飼育の事実を確認し、飼育禁止もしくは飼育改善を求められます。

この際、一般的に飼育禁止の催告の事実を残すために内容証明郵便が利用されます。

催告の内容は、以下の内容などが一般的です。

  • ○月○日までに飼育を中止すること
  • 飼育を中止しない場合には賃貸借契約を解除する意思があること
  • 飼育を中止しない場合には法的処置を検討していること
催告の内容は管理会社によって様々ですが、一般的には飼育を中止しない場合は賃貸借契約を解除する旨が記載されています。

関連記事:ペット不可賃貸住宅でのペット飼育に対する効果的な通告方法
   :ペットトラブルでの内容証明郵便の作成方法と送付マニュアル

次に催告後の流れです。

  1. 飼育が中止されない場合には契約解除が行われる
  2. 立ち退かない場合には訴訟などに発展する
まずは前述の一定期間の勧告が行われた後、契約の解除に踏み切られます。

その際にも飼い主には「契約を解除する旨」「解除予定日」などの通達が行われますので、通常この段階で再度お話し合いを設けます。

また契約解除だけでなく、ペット飼育による部屋の原状回復費用も非常に高額です。

次の住民が利用できるようにエアコンのダクト清掃から、ペットの毛を理由とした全面的な張替まで実施される場合もあります。

その金額は数十万に及ぶケースもあり、引っ越しを選択した場合にも原状回復費用と次のペット飼育可能賃貸の新規契約費用など、多大な負担を強いられます。

そのため引っ越しに必要な費用が負担できず、ペットの処分も感情面から難しい状況が予想されます。

トラブル解決のための迅速な対応

訴訟では賃借人(飼い主)に対する契約解除を認める判例が多く、結果としてペットの殺処分やペットの野生化が問題として残ります。

そのため、より柔軟な初期対応が求められます。

飼い主様からは、管理会社様や近隣住民などに対する誠実な謝罪迅速な改善を。

管理会社様からは、賃借人への十分な猶予現実的に受け入れられる条件提示が有効です。

参照:ペット不可賃貸住宅でのペット飼育に対する効果的な通告方法

問題になりやすいマンションにおけるペット騒音トラブル。

その解決には法的側面だけでなく、感情的な側面にも配慮する必要があるでしょう。