ただ、この際の契約解除には、状況に応じた慎重な通告が必要です。
ここではペット不可賃貸住宅でのペット飼育について、詳しくご説明します。
この記事が、ペットトラブル解決のお役に立てれば幸いです。
ペット飼育禁止賃貸における飼い主の意識
ペット飼育マンションでは、飼育してはいけないと知りつつ飼育するケースだけではありません。
ペット飼育禁止賃貸にもかかわらず、ペット飼育をする理由には以下の例があります。
- 購入時に仲介人にペット飼育可能と説明されていた
- 他の住民が飼育しているため、自分も飼育して良いと考えた
- 管理規約が明確でなく、一頭なら飼育可能と認識していた
- 小型犬であれば迷惑をかけない、など個人的な判断で飼育していた
その誤った認識で飼育している飼い主に対して「契約違反だから即刻ペットを処分してください」との通告が必ずしも効果的とは限りません。
ただし、ペット不可賃貸におけるペット飼育は動物アレルギーを持つ住民の生活を脅かし、ときに生命の問題にもつながる大変危険な問題です。
そのため、飼い主が受け入れられる通告方法を選択しなければなりません。
契約違反を黙認した場合の黙示の承認
賃貸契約で契約違反による契約解除を行う場合、信頼関係破壊の理論が認められる必要があります。
信頼関係破壊の理論
賃貸借契約のような当事者間の高度な信頼関係が基礎となる継続的契約では、当事者間の信頼関係を破壊したといえる程度の債務不履行がなければ、その契約を解除できない。
そのため、以下の手順を踏む必要があります。
- 内容証明郵便により、一定の猶予を含めた飼育中止の通告を行う
- 受け入れられない場合に契約の解除を行う(もしくは通知する)
- 解除後もなお立ち退かない場合には、民事訴訟を起こす
ただし、ペット飼育の事実を知りながら飼育禁止を通知しない場合、黙認とみなされかねません。(黙示の承認)
黙示の承認とみなされた場合、以下の可能性があります。
- 信頼関係の破壊が認められなくなる
- 修繕費用の請求可能額が減少する
これは飼育をしているにもかかわらず、飼育を黙認していたとみなされることに起因します。
これらの理由から、ペット飼育における違反を把握した場合には迅速な対応が求められます。
状況に応じた最適な通告方法
そして現実的に受け入れづらい通告をした場合、言い別れになり、結果的に民事訴訟に発展する恐れがあります。
そのため通告方法には、以下のケースを想定した配慮が必要です。
不動産の仲介業者から飼育可能だと説明を受けていた場合
仲介業者が故意に飼育可能であると騙し、賃貸契約の締結を斡旋したのであれば、仲介業者に引っ越し費用などの損害を請求できます。
以下の確認に加え、仲介業者から受けた契約時の事前説明の内容を確認しなければなりません。
- 賃貸募集案内書
- 重要事項説明書
- 賃貸契約書
- 管理規約
仲介業者の過失・故意を証明するのは容易ではありませんが、責任の所在を明確にしておく必要があります。
即時の退去・ペットの処分が難しい場合
ペット飼育可の賃貸住宅の新規契約費用や原状回復にも多大な負担がかかりますし、愛犬・愛猫の処分も現実的には受け入れがたいでしょう。
ペットを一時的に預けられる環境があれば、管理会社側も引っ越しの猶予を設けやすくなります。
ただし、必ずお預かりいただけるわけではありません。
ただ、飼い主が現実的に撤退できる猶予と選択肢を与えることには、一定の効果が期待できます。
管理規約が不明確、他の住民も飼育していた場合
その際、飼い主が「私だけ不平等だ!」と感情的になった場合、お話し合いは難航しますので、他の住民にも同様の対応をする旨を伝え、管理規約を明瞭にした通告が効果的です。
これは、契約解除の事前通告にも極めて有効です。
住民の方々がより快適に生活するためにも、初期の適切な対応が求められるでしょう。