より安全な愛犬の交配契約を！
愛犬の子供を残す時、犬同士の交配契約を結ぶことがあります。
そしてその際に交配契約書を作成することで、より安全に愛犬の子を迎えることができます。
ここでは犬の交配契約書の記載方法に関して、専門行政書士が詳しくご説明します。
※2017年8月22日更新
犬の交配契約書で記載するべき14の重要条項と注意点
この記事が、みなさまのお役に立てれば幸いです。
交配契約書の特徴と書き方
まず最初に、愛犬の交配契約書とはどのようなものでしょうか？
これは愛犬同士、もしくはブリーダーが用意した交配犬と交配を行い、子犬を生むための契約です。
そしてその契約には様々な条件が存在し、生まれた子をどちらが譲り受けるか、交配期間にかかった費用はどちらが負担するか、交配自体の料金などを設定します。
中には交配後に子供を授からなかった場合の対応方法など、交配自体の結果に関連する条件なども存在します。
つまり交配契約は本来、様々な取り決めによって定められる契約であり、口約束では定め切れない事項を明記するための書類になります。それと同時に、一方に不利・有利な契約条件を回避する目的もあり、より安全に愛犬の子を迎えるために欠かせない書類となります。
この記事では、その交配契約書の基本的な確認事項等を見てみましょう。
交配前のチェック事項
まずは交配契約を行う間に、事前事項の確認事項（料金等）に関して取り決めます。これらの事項は、交配契約の必要に応じてご設定ください。
1. ワクチン接種と事前検査の実施
交配前にはワクチン接種を受ける必要があります。
ワクチン接種により免疫を保有した雌犬の初乳を受け、子犬にも免疫が与えられます。そのため交配までにワクチン接種を行う旨を記載します。
交配の事前確認と検査には、以下の種類などがあります。
- スメア検査による交配適期の検査
- ブルセラ症の感染症検査
- 寄生虫の検査と駆除
- 血統による遺伝子性疾患の確認
これらは胎児や相手犬への感染予防、交配可能かどうかを判断する検査です。
契約書を締結する前に診断を行い、診断書を添付すると良いでしょう。
2. 交配前の衛生状態の管理
交配前日に雌犬・雄犬ともにシャンプーなどを行い、衛生状態を整えることを約束する条項です。感染症を防ぐために必要です。
生まれた子犬を差し上げる子返しを料金の代わりとする場合、その旨も記載しましょう。
費用の確認
次に交配料金と交配に関する費用負担を定めます。
3. 交配料と支払方法
雄犬の飼い主に支払う料金とその支払方法、支払期限を記載します。
4. 交配時のケガの治療費
犬の交配では、相性の不適合による噛みつき事故が起きることがあります。その場合の治療費の負担方法を定めます。
雄犬がケガをした場合は、その後の交配にも支障が出る可能性があります。治療費以外の別途損害金も併せて設定します。
ただ、雌犬を相手にお預けする場合には、ケガの原因がどちらの犬にあるか確認がしづらいため、治療費と別途損害金の設定には十分に注意します。
5. 預かり日数を延長した際の追加費用
犬同士を慣れさせるために事前にお預けし、交配適期が予想より遅くなった場合などの追加費用を設定します。
エサ代や繁殖小屋の利用代金などが該当します。
実施方法
次に交配の実施方法を細かく定め、条項に設定します。
特に準委任契約である交配契約には依頼者側に指揮命令権がないため、この条項にて具体的な実施内容を定める必要があります。
6. 妊娠に至らなかった場合の対応
通常、交配は適期内に二回行います。そして期間内に妊娠しなかった場合の取り決めをします。
交配契約は準委任契約のため、目的である妊娠に至らなかった場合も契約は有効です。通常はその場合にも料金を支払わなくてはなりません。
この場合、次回シーズンの交配料を無料・割引する条項などが効果的です。
7. 相性が合わなかった場合の対応
犬によっては明らかに相性が合わないことがあり、その場合には交配は行われず、もちろん目的である妊娠もしません。
その場合には料金を半額返金する条項などを設定します。
ただ、実際には交配していないにもかかわらず交配を行ったと言い張られるケースもあります。そのため次項を設定します。
8. 交配時の場所、撮影の実施
ブリーダーに依頼する場合などは、実際の繁殖場所を確認します。その繁殖場所が衛生的であることも、ブリーダーを選ぶ決め手となるでしょう。
そして契約書にもその繁殖場所を指定します。同時に交配状況をビデオ撮影、もしくは写真撮影する旨を定めます。
これは交配の大半が雄犬側の自宅などで行われるため、依頼者側が実施を確認しづらいことによります。この条項により依頼者もきちんと交配が行われたことを確認できます。
また依頼者が交配に立ち会いをする場合にも、その旨を記載します。
9. 交配期間と期間内の交配回数
犬の交配では通常、雌犬の卵子熟成から約48時間が交配適期と言われます。
その適期にあわせて何日間を交配期間として預かるか、そしてその期間内の交配回数も設定します。
10. 期間内の食事設定
犬によってはアレルギーの問題から特定のエサを与えている場合もあり、また特定のエサ以外は食べないこともあります。
その場合には依頼者が預かり期間内のエサを持参するか、雄犬の飼い主が購入して与えるかを定めます。
11. 雌犬の脱走対策と緊急時の連絡方法
雌犬が慣れない環境に不安を感じ、脱走することがあります。
その脱走対策と、緊急時には依頼者に速やかに連絡する旨を記載します。
交配・出産後の取り決め
交配後、出産後に関する取り決めを設定します。主に届出や子犬のワクチン接種などを取り決めます。
12. 複数の子犬が産まれた場合の所有権
生まれた子犬の頭数に応じて、それぞれの所有権を雌犬の飼い主と雄犬の飼い主のどちらが持つかを定めます。
健康状態や毛並などの独自の判断基準がありますので、先にどちらに選択権があるかを定めておきましょう。
また、万が一奇形の子犬が生まれた場合や、飼育可能範囲をこえた多頭出産の場合など、引受先の設定も必須です。
13. 子犬の飼い犬登録・ワクチン接種の実施
子犬の出産後は、飼い犬登録とワクチン接種が必要です。
ワクチン接種は通常、子犬の抗体が消える生後最短42日から最長150日前後以降に行うため、一般的に飼い犬登録とワクチン接種は依頼者が行います。
この条項がなければ「飼い犬登録とワクチン接種までしてくれると考えていた」と、思わぬトラブルに発展する可能性もありますので、交配契約書に記載しましょう。
14. 交配証明書の交付と血統書の登録
交配証明書の交付日と、血統書登録をどちらが行うのかを定めます。
通常、証明書は交配当日に交付し、血統書登録は依頼者が証明書をもとに申請します。
以上、交配契約書の作成には、これら14項目に配慮すると効果的です。
トラブルになりやすい交配契約に備え、想定される事項を明記しましょう。
