ペット信託でペットの将来に財産を残すという選択肢
ペットに財産を残す手段、ペット信託。

その需要が近年高まっています。

ここでは愛犬・愛猫の将来に財産を残すペット信託について、詳しくご説明します。

この記事が、皆様のお役に立てれば幸いです。


ペットに財産を残すペット信託とは

信託と言えば、利益を生み出すための「信託サービス」が広くイメージされます。

現在信託は、高齢者の財産管理や、遺言の代わりの死後の財産管理を目的とする場合も少なくありません。

ペット信託は2013年に日本司法書士連合会の河合保広理事により考案され、13年2月に商標登録が行われました。

ペット信託は飼い主がご存命のうちに、大切なペットに将来必要な費用を相続財産等から分離するために活用されます。資金の運用は行われず、飼い主に不測の事態があった場合に備え、前もって預かったお金は全てペットの飼育のために使用されます。

まずペット信託には、「自分で会社を設立する」「ペット信託専門業者に依頼する」などの方法があります。

ご自身で信託を行う場合には、ペットに残す財産を管理する管理会社を設立することから始まります。この目的は相続財産からペットに残す財産を分離する事です。

受益者(新しい飼い主)と信託契約を締結し、ペットに必要な費用の計算や支払い方法、謝礼金等を設定します。その中で「信託管理人」を設定し、負担付死因贈与契約や負担付遺贈と同様に、飼い主の死後も信託契約に沿ってペットを飼っているか見守り管理を行います。

このペット信託の方法は、信託法の民事信託の仕組みに基づいて手続きされます。

その手順は下記の手順が一般的です。

  1. 飼い主を代表とした管理会社を設立
  2. 飼い主の死後にペットに残したい財産を事前に管理会社に移す
  3. 次の飼い主を受益者とする遺言書と、ペットの飼育のためと記した信託契約書をその受益者と締結
  4. 遺産を飼育費として受益者の方に相続してもらう
次にペット信託専門のNPO法人などに依頼する場合、専門の信託機関が用意されます。

ペットのために生前からお金を預け、仮にペットが先に亡くなった場合など、信託が必要なくなった場合には預けていた金額とそれまでの費用の差額が返金されるシステムが多く見られます。

その手順は下記の手順が一般的です。

  • 飼い主と信託会社の間で信託契約を締結する
  • 遺言書に第二受益者であるNPO法人に財産を残す旨を記す
  • 飼い主に何かがあった場合には、飼い主からNPO法人等に信託の権利が移動する
  • その後、信託会社とNPO法人等で相互連携し、新しい飼い主や獣医師等への支払い・見守り管理が行われる

これらは比較的新しいシステムのため、ご利用時には専門家への相談が欠かせません。


広告主様


ペット信託のメリットとデメリット

まだ歴史の浅いペット信託。大切なペットを守るためにも、そのメリットとデメリットを理解した選択が大切です。

まず、ペット信託には以下のメリットが考えられます。

  • 相続財産とペットの飼育費を別管理できるため、相続争いに巻き込まれない
  • 専門のNPO法人等に任せる場合、財産管理や見守り管理が徹底される
  • 預けるお金は月ごとに決められ、預け金の返金等も可能。生命保険を併用できる場合もある
このように相続財産と分離しているため遺留分の侵害が起こらず、受益者が相続争いに巻き込まれないというメリットがあります。

一方「負担付遺贈」や「負担付死因贈与契約」では、贈与に当たるペットの飼育費用が他の相続人の遺留分を侵害しない配慮が必要です。

また専門の信託管理人等を設定した場合には、お金の管理やペットが大切に飼われているかの見守り管理も徹底されるため、安心して任せることができます。

そして貯蓄型の様に、預ける金額を設定できるのも一つの魅力です。現在の飼い主がペットと一緒にいられた時間に応じて預け金が返金される制度も見られます。

次に、ペット信託には以下のデメリットも考えられます。

  • 初期費用等が非常に高く、気軽に手を出しづらい
  • 信託契約等を行うNPO法人等を、さらに監視する機関が整っているかどうかが不透明
  • 歴史が浅いため今後の起きうる問題点、その対処法などの経験値が少ない
個人で管理会社を設立する場合、初期費用がかかります。会社設立費用+契約書作成+遺言書作成の段階でおよそ25万円の費用が掛かります。

次に会社の運営費として月に1~4万円、さらにここにペットの飼育費用が追加されます。

専門業者の方に頼む場合にはそれぞれ費用が設定されていますが、個人間で負担付死因贈与契約負担付遺贈を行う場合と比較しても費用は高額です。

また歴史が浅いため、どのような事が問題になるのかがまだ不透明です。信託会社から分配される金額が税務上どのように扱われるのかなど、今後一つ一つ明確になる点も少なくないでしょう。

しかしそれを補う十分なメリットもあり、非常に期待のできる選択肢です。

今後、ペット信託の需要は高齢化に伴い拡大するものだと考えます。

※当事務所では現在、ペット信託は取り扱っておりません。
 何卒ご了承の程、宜しくお願い致します。