あまり知られていないドックカフェ開業手続きも、全体の流れを把握すれば非常に簡潔です。
ここではドックカフェ開業までの全工程について、専門行政書士が丁寧にご説明します。
この記事が、素晴らしいドッグカフェ開業につながれば幸いです。
ドックカフェの開業に必要な資格
愛犬の散歩ついでに立ち寄る犬同伴のスタイルと、ドックカフェで犬を飼育し犬が接客をするスタイルがあり、それぞれに必要な資格・許可は以下の通りです。
ドックカフェのスタイル | 必要な資格・要件 | 必要な許可・登録 |
---|---|---|
犬同伴のスタイル | 食品衛生責任者 | 飲食店営業許可 |
犬が接客するスタイル | 食品衛生責任者 動物取扱責任者 |
飲食店営業許可 第一種動物取扱業(展示) |
これは犬のみに飲食を提供する場合は、不要です。
次にドックカフェで犬を預かる場合には、第一種動物取扱業(保管)の登録も必要です。
この様に食事の提供先によって、まず必要な許可が異なります。
次にテイクアウト用にドックフードの製造・販売をする場合には、ペットフード安全法が適用されるため、以下の注意点があります。
- 製造者として事前の届け出を行うこと
- 製造業者として帳簿の記載を行うこと(小売業者は不要)
- 基準違反・届出違反の場合には罰則規定があること
ただし、これはテイクアウトを目的にしたペットフードを製造・販売する場合です。
店舗内で与えるペットフードのみを製造するドックカフェでは、届出は必要ありません。
ドックカフェの飲食店営業許可に求められるもの
次にドックカフェで黒字経営を目指す以上、飼い主などの人への食事提供は必須でしょう。
人に食事を提供する場合には、ドックカフェを開業する所轄の保健所に飲食店営業許可を申請しなければなりません。
では、ドックカフェでの飲食店営業許可の必要条件を見てみましょう。
ドックカフェの飲食店営業許可申請に必要な条件
食品衛生責任者を配置すること
食品衛生責任者資格の取得には、都道府県で実施される養成講習を受講します。
これは全国どの講習を受けても構わず、受講後は受講修了書が当日交付されます。
外国人の場合には、日本語が理解でき在留カードか特別永住者証明書を保有していれば問題ありません。※東京都の場合
また以下の資格者は、養成講習を受講することなくそのまま食品衛生責任者になれます。
- 栄養士
- 管理栄養士(栄養士資格も持つため)
- 調理師
- 製菓衛生士
- 食鳥処理衛生管理者
- 船舶料理士
- 食品衛生管理者
- 食品衛生指導員もしくはその経験者
- 食品衛生監視員
ドックカフェの施設条件を満たしていること
また飲食店の営業許可取得には、運営する店の種類により施設基準が異なります。
この施設基準には、自動販売機以外の業種に必要な「共通基準」や、業種ごとに定められた「特定基準」があります。
まずはこれらの基準に基づいて、ドックカフェの内部を構成しましょう。
これらは各都道府県における指導方針であり、衛生状態関する指導目安が定められています。
これは動物と触れ合う機会が多いため、食品衛生上の厳しい管理が求められるためです。
そのため、通常の施設基準に加えて下記の施設基準が求められる可能性があります。
ドックカフェに求められる主な施設基準
- ドッグカフェである旨を掲示すること
- 調理場・客席間を区画で分けること
- 客席内に手洗い設備を設けること
- 犬の食事用の調理設備と、犬専用の食器洗浄の設備を設けること
- 犬に食器、椅子・机などに触れるなど非衛生的な行為をさせないこと
- 犬のブラッシングを行わないこと
- 食品取扱者は犬に触れないこと
- 飲食店営業許可申請書の備考欄に「ドックカフェ」である旨を記載すること
もし保健所と施設責任者の立ち会い審査で不合格になった場合には、後日の再検査が必要です。
そのため事前に保健所に問い合せ、求められる施設基準を確認しましょう。
これらのドックカフェに求められる施設基準は、保健所だけでなく利用者に対しても必要な配慮です。
通常のカフェとしても魅力的なドックカフェを目指しましょう。
消防署に届け出をすること
飲食店営業許可に伴い、消防署に下記の届け出が必要です。
届出の種類 | 届出が必要になる場合 | 届出の期日 |
---|---|---|
防火管理者選任届 | 収容人数が30人をこえるとき | 営業開始まで |
防火対象設備使用開始届 | 建物を利用開始するとき | 建物の利用開始10日程度前まで |
火を使用する設備等の設置届 | 火を使用する設備を設置するとき | 設置前まで |
ドックカフェの延床面積が300平米以上ならば甲種防火管理者、延床面積が300平米未満ならば乙種防火管理者が必要になります。
まずは乙種防火管理講習にて乙種防火管理者を取得し、その後防火・防災管理新規講習を受講し、甲種防火管理者を取得します。
これらの管理者資格は各消防署や防災訓練センターで受講できます。テキスト代が受講料となり、下記の料金が必要です。※東京都の場合
講習の種類 | 教材費 |
---|---|
防火・防災管理新規講習 | 5,000円 |
防災管理新規講習 | 1,400円 |
乙種防火管理講習 | 1,500円 |
飲食店営業許可申請に必要な書類・費用
次に必要な下記の書類と費用を、所轄の保健所に提出します。
- 営業許可申請書
- 営業設備の図面などの概要
- 食品衛生責任者設置届
- 給水関係の書面
- 1年以内の水質検査成績書(貯水槽や井戸水を利用する場合)
- 営業許可申請手数料 15,000円~20,000円(自治体による)
食品衛生責任者設置届は東京都では営業許可申請書にて代用するため、不要です。
1年以内の水質検査成績書は、ドックカフェが入居するビルの管理者に確認します。
飲食店営業許可申請の流れ
ドックカフェ飲食店営業許可申請から開業までの手順は、以下の通りです。
保健所との事前相談を行う
ドックカフェを開業する所轄の保健所に、事前相談をします。ドックカフェの開業である旨を伝え、図面上の問題点を指摘して頂きます。責任者もしくは代理人の行政書士などが向かいます。
図面は手書きでも結構ですし、内装業者から渡されている図面があれば持参します。ドックカフェ特有の視点から指摘してもらえることもあるので、事前の相談は必須です。許可申請後に再改装を求められる危険を回避できます。
営業許可申請書を保健所の窓口に提出する
前述の飲食店営業許可申請に必要な書類・費用を保健所の窓口に提出します。その際、設備の審査日を打ち合わせします。
提出のタイミングが合わなければ、保健所か営業者かどちらか待つことになります。そのため営業開始予定日の2週間~3週間前に提出します。
立ち会い審査で施設の説明をする
保健所の職員に責任者から施設の説明を行います。不合格の場合には後日の再審査日を設定します。
合格するまで仕込みなどの営業行為はできません。一回で合格したいものです。
営業許可書が保健所から交付される
立ち会い審査にて合格すれば、約10日前後で営業許可書が交付されます。保健所から連絡をもらい、窓口に取りに行きます。
開業直後にしておくこと
ドックカフェ開業直後は、以下の届け出が必要です。
申請先 | 提出するもの | 提出期限 |
---|---|---|
所轄の税務署 | 開業届 (個人開業の場合) |
開業開始月から 1カ月以内 |
給与支払事務所等の開設届出書 (給与の支払いがある場合) |
||
青色申告承認申請書 | 開業開始月から 2カ月以内 |
|
所轄の年金事務所 (社会保険事務所) |
健康保険・厚生年金保険 | 事実発生から 5日以内 |
所轄の労働基準監督署 | 労働保険 保険関係成立届 | 雇入れの翌日から 10日以内 |
労働保険 概算保険料申告書 | ||
所轄のハローワーク | 雇用保険 適用事業所設置届 | 雇入れの翌日から 10日以内 |
雇用保険 被保険者資格取得届 |
健康保険・厚生年金保険は個人のドックカフェで常時5人以上の従業員を雇用している事業所に加入義務があります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請は、給与を支払う従業員が常時10人未満であるときに、源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税などを、まとめて年2回で納付する特例制度を受ける場合に申請します。
労働保険(雇用保険・労災保険)は常時1人以上の従業員を雇用している事業所に加入義務があります。
参照:国税庁 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
:日本年金機構 新規適用の手続き
:厚生労働省 労働保険制度(制度紹介・手続き案内)
:ハローワーク 雇用保険手続きのご案内
※上記は個人開業の場合であり、法人の場合は別途の届出が必要です。
開業直後から順次整えていく運営書類
これらは本来、事前準備が望ましいのですが、次第に追記する内容も増えてきます。
そのため、ここでは「順次整えていく書類」と表記しております。
運営に必要な書類には、以下の書類があります。
- (1) チラシ、パンフレットなどの販促広告
- (2) 地域を囲い込むWEB広告
- (3) SNSを使用したお店の認知UP
- (4) 免責事項を明記した利用規約
ドックカフェの場合は、都心など人の往来が激しい地域ではなく、人気のある散歩コースの近隣に開業するケースが見られます。
それらは人目に付きづらく、まず最初のお客様をキャッチするまでが最初の課題です。
特に、お店で手作りのおやつなどを販売する場合、WEBでのネット販売が必須条件です。
SEO等に配慮したHPやSNSページを作成することで、広告費無しの運営も可能です。
また開業前にこれらのWEBページを作成することで、開業までのカウントダウンといったページも作成できます。
開業直後からの固定客を獲得するためにも、是非ご作成下さい。
そして(4)の利用規約は、ドックカフェを安全運営するための必須書類です。
これらはドックカフェ運営において、以下の働きをしてくれます。
利用規約によるトラブル予防
- 料金形態の明示
- 利用条件・お断り条件の明示
- 免責事項によるトラブル時の責任範囲の明示
- 運営方針や各種取扱情報の明示
そして利用規約では、その場合の責任の所在や負担額の上限額を設定します。
これにより、利用者からの上限のない請求を回避することが可能になります。
ドックカフェにおける多くのトラブルでは、この利用規約が不十分であることに起因します。
適宜更新が必要な書類ですので、ご自身のドックカフェを守るためにも必ずご用意下さい。
利用規約の作成やWEBを使ったの集客をお考えでしたら、お気軽にご連絡下さい。
専門の行政書士による無料相談をご用意して、お待ちしております。
開業後に定期的な更新が必要なもの
ドックカフェ開業後は、定期的に以下の更新が必要です。
更新が必要なもの | 有効期限・更新期限 |
---|---|
飲食店営業許可書 | 5~8年 (建物の構造により異なる) |
食品衛生責任者 | 数年に1度 (自治体により異なる。東京都は義務なし) ※2016年2月12日現在 |
第一種動物取扱業登録 | 5年 |
動物取扱責任者 | 毎年1回3時間以上の講習 |
防火管理者 | 1年以内の再講習 (選任された日の4年前までに講習を修了した人) |
最後の講習日から最初の4月1日から5年以内の再講習 (上記以外の人) |
この記事が、皆様のドックカフェ開業のお力添えできれば幸いです。