ペットトラブルに関する被害届・告訴・告発の特徴と届出の方法
飼い犬の噛みつきなどのペットトラブルを、警察など捜査機関に申告することがあります。

その場合に届出する被害届・告訴・告発には、どのような違いがあるのでしょうか。

ここではペットトラブルでの被害届・告訴・告発について、詳しくご説明します。

この記事が、ペットトラブル解決のお役に立てれば幸いです。


ペットトラブルにおける被害届の特徴と届出方法

被害届の特徴

被害届とは、警察などの捜査機関に対して犯罪に巻き込まれた事実を申告する書類です。

被害届は告訴と異なり、「加害者(と思われる方)の処罰を求める申告」ではなく、あくまでも事実を申告する行為です。届出により法的な効果が発生するわけでありません。

被害届を届出したとしても、実際に捜査するかは捜査機関(警察など)の判断によります。法的に捜査の義務が発生するわけではありません。捜査は犯罪の可能性が高いと判断された場合などに行われます。

複数の人から同一の飼い犬に噛まれた内容の被害届が申告された場合などには、これ以上の被害を防ぐために、捜査が行われる可能性があります。

もし確実に捜査を求めるのであれば被害届ではなく、後述の告訴(刑事告訴)を申告する必要があります。

捜査機関による被害届の受理

被害届の受理は義務とされています。日本の警察官が犯罪の捜査を行う上での規則である犯罪捜査規範に関連する条文があります。

犯罪捜査規範 第六十一条(被害届の受理)

警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。

ただ、事案によっては被害届がスムーズに受理されない場合があります。

被害届の不受理は証拠が不十分・事案が軽微などが理由とされています。特に飼い犬の噛みつきなどのペットトラブルの場合は、事案が軽微であることを理由に、当事者間の話し合いをすすめられる場合があります。

これは「被害届を提出しました。取り下げて欲しいのならば…」というように、被害届がトラブルにおける駆け引きに多く利用されることも、不受理理由の一つだと考えられます。

実際にペットトラブルで被害届を申告する場合、真摯に受理を願う姿勢が効果的かつ現実的です。

また被害届が受理されない場合には、警察本部の監査に被害届の受理を申し立てる方法もあります。

被害届の届出方法

被害届の届出は、被害があった場所を管轄する警察署もしくは交番に常備される書類を提出します。

また最寄りの警察署・交番への届出も可能です。その場合、被害届は被害の発生地の警察署に引継がれます。

飼い犬に噛まれた被害届を届出する場合、以下の被害に関する項目を記載します。

  • 噛まれた方(被害者)の住所、氏名、年齢、職業
  • 噛まれた日時・場所・状況
  • 被害の内容(ケガの程度や治療費など)
  • 飼い主の住所・氏名・特徴(不明時は不要)
  • 飼い主との関係
  • 噛まれたことに対する示談の有無
  • 噛まれたことの証拠(診断書など)

あわせてご自身の印鑑、免許証などの身分証明書、噛みつきの証拠書類も持参します。またこの際、警察官に代書をお願いできます。

被害届の受理後は前述の通り、警察などの捜査機関より捜査するか判断が行われます。

告訴・告発の特徴と届出方法

告訴・告発の特徴

告訴(刑事告訴)とは、被害者から警察などの捜査機関に対して犯罪の事実を申告すると同時に、加害者への処罰を求める行為です。(刑事訴訟法 第230条)

告発とは、被害を受けた本人ではなく第三者から処罰を求める申告手続きです。(刑事訴訟法 第239条1項)

告訴と被害届との違いは、犯罪事実の申告だけでなく相手の処罰を求める点です。

告訴・告発が受理された場合、警察などの捜査機関に捜査義務が発生します。さらに、捜査の結果を基に起訴するかの判断を申告者(被害者)に報告する義務が生じます。

捜査機関における告訴・告発の受理

告訴は、被害届以上に受理・不受理の判断が慎重に行われます。

告訴状を受理した場合、捜査機関は捜査に人員・費用・時間などを費やします。加えて加害者を起訴するには冤罪(無実の罪)の可能性を可能な限り減らす必要があります。実際に起訴後の有罪判決は99%と極めて高い数字です。

そのため全ての告訴状がスムーズに受理されるとは限りません。受理する段階での十分な有罪の証拠書類を求めてきます。多くの場合、告訴の前に被害届の提出を求められます。

告訴・告発の全体像流れ

まず最初に、告訴・告発の大まかな全体の流れは以下の通りです。

  1. 告訴・告発の受理
  2. 警察などの捜査機関による捜査及び逮捕
  3. 検察官への送致(処理権限の移転の手続)
  4. 検察官による起訴・不起訴の判断
  5. 裁判による有罪・無罪の判決

告訴・告発の届出方法

次に告訴・告発の届出方法を確認しましょう。

告訴・告発の申告先は、以下の捜査機関などがあります。

  • 警察
  • 検察
  • 都道府県労働局
  • 労働基準監督署
  • 海上保安部
申告先は複数ありますが、一般的には警察署に告訴状・告発状を提出します。

書面だけでなく口頭でも可能とされていますが、実際には、具体的な被害内容や犯罪事実を把握するために、書面での提出を求められます。

また条文上は、事件の管轄外の警察署にも提出できますが、実際には管轄の警察署以外では提出を拒否されることがあります。

飼い犬に噛まれた告訴状では以下の告訴に関する項目をA4サイズの紙に横書きに記載します。

    申告先と告訴状作成年月
  • 告訴状の作成年月日
  • 申告する捜査機関名の記載
  • (記載例)○○警察署長 殿

    告訴人(噛まれた人)の情報
  • 氏名の署名+押印
  • 住所
  • 職業
  • 生年月日
  • 電話番号
  • FAX番号
  • 告訴人(飼い主)が法人の場合
  • 法人名
  • 所在地
  • 代表取締役氏名+代表者印の押印
  • 登記簿謄本の添付
  • ※飼い犬に噛まれたなどのペットトラブルの大半は個人間です。その場合は記載は不要です。

    被告訴人(飼い主)の情報
  • 氏名(不明時は不詳と記載)
  • 住所
  • 職業
  • 勤務先
  • 告訴の趣旨
  • 飼い主に対して処罰を求める旨
  • どの犯罪に該当すると考え、被告人の処罰を求めるのかを明記します。飼い犬が噛みついた場合などでは、飼い主に過失傷害罪が該当する可能性があります。

    (文例)被告訴人の以下の所為は、過失傷害罪(刑法209条)に該当すると考えるため、被告人の厳罰な処罰を求め告訴します。

    告訴事実の記載
  • 犯罪の経緯や動機、出来事の関係性など犯罪事実の詳細
  • どのような犯罪事実があったか、順を追って明確に表記します。曖昧な表現を使用せず、出来事を端的に表記します。

    添付資料の情報
  • 犯罪事実を証明する資料
  • (例)○○病院での診断書

前述のように告訴状の受理は精査が厳しく、ペットトラブルではさらに難しくなります。

告訴事実をより具体的・明確・端的に記載し、証拠添付書類を可能な限り用意しましょう。

長期化したペットトラブルでは、被害届・告訴も平穏な生活を取り戻すために必要な選択だと思います。