散歩中に車に接触してしまったり、クラクションに驚き、車道に飛び出すケースもあります。
ここでは愛犬の交通事故における治療費・慰謝料について、詳しくご紹介します。
この記事が、少しでも早い問題解決に繋がれば幸いです。
愛犬の交通事故に関する基礎知識
愛犬は民法・刑法上は物として扱われます。そして交通事故でケガ・死亡をしてしまった場合は、対人の交通事故と大きく扱いが変わります。
大切な愛犬ですが、法律上は物として扱われる以上、その法に準じます。具体的には下記のように扱われます。
愛犬が交通事故でケガをした場合
車との交通事故の場合には、相手の対物賠償保険から補償を受けます。その際、保険額の上限が愛犬の時価により算出されるため、愛犬に後遺症が残った場合には、その後の治療費請求は難しいとされます。
ただしこれは民法上・保険上であり、当事者間の和解(示談)交渉では、支払うべき治療費を柔軟に話し合います。
交通事故の運転手に問う責任は、以下の通りです。
- 民法709条に基づく不法行為責任
- 道義的責任
「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」
これが愛犬の治療費など、損害賠償を請求する根拠となります。
飼い主の家族でもある愛犬をケガさせたことに対して、道徳や人として行うべき道理としての請求です。和解(示談)交渉では、上記の不法行為だけではなく、この道義的責任も焦点となります。
愛犬が交通事故で死亡した場合
そして基本的には慰謝料の請求は認められません。財産的な損害は財産によって補てんされ、精神的苦痛は発生しないと考えられるためです。
ただし過去にはこんな事例もあります。
愛犬のラブラドールレトリバーが交通事故により腰椎圧迫骨折の傷がいを負い、後肢マヒ、排尿障害の後遺症が残った事案において、「生命の持つ動物の性質上、必ずしも当該動物の時価相当額に限られない」との判断から、車いす代を含む治療費として13万6500円、「飼い主にとってかけがえのない存在である」との判断から、飼い主である夫婦各人へ慰謝料20万円が認められた。
(このケースでは犬用シートベルトの非着用により、飼い主側にも1割の過失割合が認められた)※名古屋高裁平成20年9月23日判決
また、愛犬は近年コンパニオンアニマルとして周知されてきており、今後も飼い主との関係によって慰謝料が認められる傾向にあります。
コンパニオンアニマル
従来では所有物扱いのペットに対して、生活して行く上での伴侶とする、より密接な関係を人間と持っている動物を指す。人と同じように扱い、これら生活における飼育動物への依存度が増大するにつれ、ペット業界や動物病院などでは飼い主の感情に配慮して、単なる愛玩物・所有物としてのペットではなく、「人生の伴侶」としての動物であるとして、同語への呼び替えも見られる。
引用元:Wikipedia
また、これは裁判での話です。和解(示談)交渉では、交通事故の加害者側と柔軟に話し合い、慰謝料を含む治療費などの請求を行います。
また愛犬がチャンピオン犬などのケースでは、間接損害が認められる余地があります。
飼い主の管理責任による過失相殺
ノーリードでの散歩などは「動物の愛護及び管理に関する条例」において禁止されており、その状態での交通事故の場合、飼い主の過失割合が多くなり、場合によっては車の修理費の支払い義務が発生します。
愛犬の首輪を取り換えようとした際、急に走り出して交通事故になった場合なども同様に、飼い主側の過失割合が高くなります。
治療費・慰謝料の請求方法
愛犬の交通事故における、治療費・慰謝料の請求には以下の方法があります。
- 当事者で直接、和解交渉を行う
- 直接ではなく和解書(示談書)を送付し合う
- 内容証明郵便を利用して請求する
- 弁護士に示談交渉を依頼する
大切な家族の交通事故という考えと相手の物を壊してしまったという法的な見方、犬が勝手に車に飛び出してきたという受け取り方、それぞれがぶつかり合い、各人が求める結果にならないためです。
お話合いが出来るならば示談交渉を行い、治療費・慰謝料を算定し、治療費・慰謝料を請求します。お話しをしたくない場合には和解書(示談書)を送付し合い、署名・押印のうえで支払いを行う方法もあります。
これら和解(示談)交渉の内容はできるだけ示談書(和解書)に残し、お互いの自宅などで保管しましょう。
民法709条に基づき不法行為への法的処置をとる意思があることを伝えることで、相手により真摯な態度を求める効果的な方法です。
より厳粛な雰囲気でお話し合いをすることができます。