この契約はペットを飼育していただく見返りとして、一定の財産を差し上げる方法です。
ここではペットを任せる負担付死因贈与契約に関して、詳しくご説明します。
この記事が、より良いペットライフにつながれば幸いです。
負担付死因贈与契約の特徴
ペット飼育の負担付死因贈与契約には、以下の特徴があります。
- 飼い主がご存命の間に、受贈者と契約を交わす
- 財産を譲渡する見返りに、ペットをお世話していただく
- 贈与者(飼い主)の死後、財産が贈与される
- 負担を履行(ペットを飼育する)した場合のみ、財産が贈与される
財産の受贈者は、契約に基づいた債務(犬・猫を飼育すること)を果たし、贈与の効果は、贈与者(飼い主)の死亡時に発生します。
このように通常の贈与契約は「今すぐあげる」という内容ですが、死因贈与契約では「亡くなってからあげる」という点に違いがあります。
この契約の長所と注意点
この契約には、以下の長所と注意点があります。
負担付死因贈与契約の長所
- 合意により生前から負担を任せられる
多くの場合、飼い主がお亡くなりになる直前はペットの飼育も難しくなり、飼育を事前にお願いする必要があるため、生前から飼育をお任せするほうが良いケースが多いでしょう。
また、事前にペットの性格や趣向を伝えることもでき、飼育状態を見守れるメリットもあります。その分、飼育期間も長くなるため、ペットに対する愛着も湧きやすくなるでしょう。
- 贈与者の死後、受贈者から一方的な放棄ができない
- 負担が守られない場合には、契約の取り消しが可能
契約の取り消しに関しては、負担が履行されている範囲によって、取り消しできるかどうかが異なります。
契約の取り消し
- 負担が履行されていない場合は、遺贈の規定により取り消しが可能
- 負担が全部または一部履行された場合は、原則取り消し不可
※やむをえない特段の事情がある場合も、遺贈の規定により取り消し可能。
次に、契約書を作成することにもメリットがあります。
- 贈与金銭額が明確なため、受贈者と合意しやすい
- 契約書により証拠保全しやすい
- 遺言公正証書より公正証書が作成しやすい
さらに税金や執行者の選択に関してもメリットがあります。
- 相続税の対象になり、受贈者の負担が少ない
- 死因贈与に関する執行者を指定できる
そのため、飼い主の死後も受贈者が契約通りに飼育しているかを管理するための「死因贈与執行者」が指定できます。
もし受贈者(新しい飼い主)が契約通りに飼育していない場合、執行者から受贈者に対して飼育の改善を請求でき、場合によっては家庭裁判所に死因贈与契約の撤回を申し立てられます。
負担付死因贈与契約の注意点
負担付死因贈与契約には、以下の注意点もあります。
- 契約書を作成しない場合、撤回される恐れがある
- 相続財産から贈与を行うため、他の相続人の遺留分に配慮する必要がある
契約書を作成しない契約は撤回できるとされるため、必ず最適な契約書を作成しましょう。
特に贈与者に相続人がいる場合、相続財産には以下の遺留分があるため、注意が必要です。
遺留分とは
民法1028条に認められた、被相続人の兄弟と姉妹以外の相続人が最低限相続できる財産の割合のこと。
負担付死因贈与契約の贈与額が、この遺留分を侵害している場合、遺留分減殺請求により不足分を請求される恐れがあります。
遺留分減殺請求とは
遺留分を侵害された相続人が、贈与または遺贈を受けた者に対して、遺留分侵害の限度内で贈与または遺贈された財産の返還を請求すること。負担付贈与契約の贈与額が相続人の遺留分を侵害している場合に、請求される可能性がある。
ただペットの飼育に必要な費用のみを贈与する場合、相続財産全体と比較して贈与額が少額なケースが多く、一概に遺留分を侵害するわけではありません。
いずれにせよ事前に相続財産と遺留分を計算する必要があります。
より効果的な契約の結び方
そして、より効果的に負担付死因贈与契約を締結するためには、以下のポイントがあります。
- 事前に受贈者に飼育環境をご覧いただく
- 過去一年の飼育費用を算出し、受贈者に飼育費用の概算を提示する
- 飼育費用とお礼金を明確に分離する
- 飼育費用とお礼金を贈与する
そのためには飼育自体の負担と飼育にかかる経済的負担を事前に確認し、その内容を契約書に明記することが効果的です。
「こんなに大変だとは思わなかった」といった不満が抑えられ、ペット達の安全な将来につながるでしょう。
継続的な飼育をお願いするためには、金銭面でのサポートも必要不可欠です。より安全な契約書をご作成下さい。