トラブルに備え、返還条件を定めたい
里親と交わす犬・猫の譲渡契約書には、効果的な書き方が存在します。
同時に無料の譲渡契約書には、大きな危険が伴います。
ここでは犬・猫の譲渡契約書の書き方について、専門行政書士が丁寧にご説明します。
この記事が、皆様の安全な里親譲渡のお役に立てれば幸いです。
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譲渡契約書の作成の流れ
そしてその時、より安全な譲渡に向けて譲渡契約書をご検討されているとします。
ではまず、私たちは何をするべきでしょうか。
里親様とかわす犬・猫の譲渡契約書には、以下の3つの要素が重要です。
これらの3点は、よりスムーズ・安全に譲渡を進めるためのポイントです。
では最初に譲渡契約書の準備方法を確認してみましょう。
譲渡契約書の作成準備をする
私たちが犬・猫の譲渡契約書を作る際、どの様な方法があるのでしょうか。
まず譲渡契約書の作成には、一般的に以下の方法があります。
- (1) 紙に手書きで書き込み、相手の分はコピーする
- (2) パソコンで契約書を自作し、2通出力する
- (3) WEB上にある契約書を、2枚分コピーする
- (4) 行政書士・弁護士事務所に、作成を依頼する
簡便な作成方法から法律事務所の職印を入れる厳格な書式まで、その方法は様々です。
これらの方法は自作のため時間はかかりますが、費用が掛からないメリットがあります。
手書き・パソコンで自作する
この場合でも契約自体が不備になるわけではなく、本記事でご説明する譲渡条件を明記すれば、立派な譲渡契約書を作成できます。
ただし手書きの場合には、以下の点に注意しなければなりません。
- (1) 作成に手間がかかる
- (2) 修正・複写が難しい
- (3) 余白や空欄があった場合、改ざんしやすくなる
- (4) 法的なチェックが入らない
- (5) 単純に厳粛なイメージが少ない
その場合に備えて「余白を作らない」「捨て印を押さない」「三通作成し、譲渡に立会人を立てる」などの配慮が効果的です。
その点、パソコンによる作成は修正もしやすく、空白を削除するのにも優れています。その場合にも、双方が保管するために必ず2通作成しておくと良いでしょう。
作成した譲渡契約書が複数ページに渡る場合、袋とじをして契印を押しましょう。
これは契約書に別ページを差し込む予防策であり、見栄えもぐっと良くなります。
袋とじと契印の押し方に関しては、こちらの記事でご紹介しています。
タイトルは内容証明郵便に関するものですが、譲渡契約書の場合も同じ工程です。
参照:内容証明郵便で使用する印鑑と契印・訂正印・袋とじの方法(画像付)
WEB上の雛形を使用する
ただしその雛形をそのまま使用するのではなく、ご自身の里親譲渡に合わせた譲渡条件の修正・追加が必要です。同時にインターネットから出力した、という印象にも配慮しなければなりません。
これは何を持って『愛育』とするのか不透明であり、里親側の飼育環境が劣悪であることを理由に、返還請求する明確な根拠となりづらいのも事実です。
そのため『愛育』や『大切に』といった包括来な表現ではなく、具体的な返還条件を追記するなど、曖昧な表現を回避する対策が必要です。
「大切に飼育すること」という条件は勿論重要ですが、より具体な条件が望ましいでしょう。
行政書士・弁護士事務所に作成を依頼する
これは専門家が作成することで、その譲渡に必要な条件のアドバイスも受けることができ、より迅速に譲渡契約書を作成することが可能です。
手書きの書類や雛形印刷とは違った、譲渡自体の重要性を引き立てる仕上がりになるでしょう。
これらは譲渡契約書自体に違法性がないかの確認と同時に、より締結したい譲渡条件等を設定する上でも有効です。
当事務所でも愛犬・愛猫の譲渡契約書・和解契約書の作成を承っておりますので、是非お気軽にご連絡下さい。
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犬・猫の譲渡契約書に書く内容
まず犬・猫の譲渡契約書には、大きく分けて以下の2種類を記載します。
- 譲渡契約書に求められる基本的な記載事項
- 里親譲渡毎に設定する細かな譲渡条件
そして後者は、里親譲渡に応じた細かな条件です。これは個々の里親譲渡毎に定める事項であり、飼育環境や譲渡後の報告義務など、個別の契約に合わせて設定します。
いずれの項目も重要ですが、特に後者の譲渡条件は時間をかけて検討する必要があります。
では、それぞれの項目を細かく見てみましょう。
譲渡契約書に求められる基本事項
これらの項目は里親譲渡だけでなく、物品の譲渡契約書にも共通する内容です。具体的には、以下の内容を記載しましょう。
- 里親・元親の情報
- ペットの所有権を移転する旨(譲渡契約の目的)
- 契約日時
- 譲渡対象となるペットの詳細
- 譲渡日(所有権の移転日)
- 譲渡方法
- 譲渡条件(※具体例・詳細は後述)
- 誠実協議条項
- 合意管轄
譲渡日(所有権移転日)やペット情報などの基本的な項目も多く、ご作成の際にも比較的スムーズにご記載いただけると思います。それぞれの書き方は、後半の譲渡契約書の文例でご説明しますので、ぜひご覧下さい。
そして里親譲渡において大切なのは、上記の「譲渡条件」であり、安全な譲渡に直結する項目です。
個々の里親譲渡に合わせた譲渡条件が必要であり、雛形的な譲渡契約書には危険が伴います。里親トラブルを回避するためにも、ここから詳しくご説明致します。
細かな譲渡条件
法律で記載事項が定められているわけではないので、条件は多くも少なくもなります。同時に譲渡自体を妨げる圧迫感のある条件を削る配慮も必要です。
まず譲渡条件には、大きく分けて以下の3種類があります。
これらは最初のお話し合いで定め、譲渡契約書内に盛り込んでいきます。ではこれらの項目を、一つづつ確認してみましょう。
飼育方法に関する条件
これには、ペットの習性や持病、今までの飼育方針などが影響します。
この飼育方法に関する条件には、以下の種類があります。
- 完全室内飼育を行うこと
- 継続的なワクチン接種を行うこと
- 法令に基づいた登録・飼育方法を遵守すること
- 定期的な健康診断を実施すること
- 去勢、避妊手術を実施すること
- 元親に定期的に報告すること
- ペットの脱走防止策を講じること
ただしあまりに条件を設定しすぎた場合、譲渡自体が見送られることもあります。そのため、丁度良いバランスを話し合いでお決めになると良いでしょう。
また、飼い主としての自覚を促す意味合いとして畜犬登録、ワクチン接種票の装着など、法令を遵守する旨も効果的です。既にワクチンを接種している場合は、接種時期を記載するなどの記録的な使い方もできます。
「元親に定期的に報告すること」は、頻度が高すぎる場合や期間が長すぎる場合、過干渉と捉えられる場合もあります。
また本来、里親譲渡は信頼関係を築いた上で決めるものです。ご自身の判断で譲渡した以上、過度に干渉しないことも大切です。
費用・手続きに関する条件
これは譲渡にかかる輸送費用やワクチン接種代、譲渡のためのご用意代など、様々な項目が挙げられます。
もしペットの譲渡自体に金銭が発生するのであれば、売買契約書になりますが、通常の里親譲渡は無償譲渡(ペット自体に金銭が発生しない)ですので、ここでは輸送費などの以下の負担を定めます。
- 輸送費用
- ワクチン接種にかかる費用
- 去勢手術等にかかる費用
- 使用してたグッズの買い取り費用(無償の場合は無し)
費用に関して特に定めない場合には、里親様(譲渡後の所有権者)が負担するものと考えて良いでしょう。
譲渡後、里親が避妊手術やワクチン接種を実施する譲渡条件もあります。
その費用を折半する場合には、支払方法や期限なども合わせて記載しておくと効果的です。
返還に関する条件
この条件により里親詐欺や転売を予防しますが、里親様の心証への配慮も必要です。
返還条件は、一般的に以下の種類があります。
- 飼育条件に違反した場合
- 期限内に費用の支払いがない場合
- 転売・再譲渡した場合
- ブリーダー犬・猫として利用した場合
- 明らかな虐待・飼育放棄が確認された場合
逆に言えばこれらの返還条件がない場合、ペットの返還請求は格段に難しくなります。
「大切に愛育する条件に違反している」といった返還請求は、かなり曖昧な理由です。
その観点から考えると、形式的な「大切に飼育すること」といった文言は、契約上は非常に弱い効力です。人により飼育の基準は異なりますので、より具体的な返還請求理由を設定してしましょう。
犬・猫の譲渡契約書の書き方と注意点
この書式をベースに、ご自身の譲渡条件などを適宜追加されると良いでしょう。
まずタイトルと契約を交わす当事者の名前・譲渡目的などを記載します。タイトルは譲渡契約書、里親契約書のいずれでも構いません。
「責任を持って大切に飼育していただくことを目的に」といった表現を加えることもありますが、最も重要なのは譲渡条件に記載された具体的な取り決めです。「大切に飼育すると記載しているから大丈夫!」とご安心されるのは、少し危険です。
甲は乙に下記の動物(猫)の所有権を平成 年 月 日付けで譲渡します。
《ペットの情報》
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次に、譲渡するペットの情報を書き込みます。
ここには「ペットの名前」「年齢」「犬種・猫種」「毛の色」「性別」「血統書の有無」「血統書番号」など、詳細に特定できる情報を記載しまし、譲渡ペットのとらえ違いなどを予防します。
令和 年 月 日
甲譲渡人 住所 ○県○市○町○丁目○番○号
連絡先 ○○○-○○○○-○○○○
氏名 ○○ ○○ ㊞
乙譲受人 住所 ○県○市○町○丁目○番○号
連絡先 ○○○-○○○○-○○○○
氏名 ○○ ○○ ㊞
最後に、譲渡日、譲渡当事者の署名・押印を施します。
譲渡に立会人をご用意される場合は譲渡契約書を3通作成し、立会人の署名欄を用意すると良いでしょう。
その場合は「本契約書を2通作成し、甲乙署名捺印の上、各自1通を保有します」この部分を「本契約書を3通作成し、甲乙及び本契約の立会人がそれぞれ署名捺印の上、各自1通を保有します」にお書き直しください。
ペットの写真や誕生日を添えるなど、より柔軟で記念に残る書類にお仕上げください。譲渡相手に圧迫感を与えないように、文末表現を柔らかくするなどの工夫も効果的です。
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契約書の交わしかたと保管方法
近隣にお住まいかどうかも、譲渡契約書の交わし方に影響します。
- (1) 直にお話をしたうえで作成し、譲渡時に署名・押印をする
- (2) 先に譲渡契約書を用意し、お話し合いの時に署名・押印をする
- (3) 譲渡契約書を送付し、署名・押印をいただき返送してもらう
既に譲渡条件等が決まっている場合は(2)を。これからお話し合いで譲渡条件等を決めるなら(1)の方法が良いでしょう。
どちらの場合も譲渡契約書を二通作成し、目の前で署名・押印をするとなお良いでしょう。
話し合いで新しい条件が生まれる場合に備え、譲渡条件を書き込める箇所を用意する方法もあります。ただし、書き込まなかった場合には斜線を引き、改ざん予防も行いましょう。
また( )といった表記をし、譲渡日やお名前を記載する方法も良いでしょう。
受領したら署名・押印を施して一通は返信し、もう一通はご自身で保管しましょう。できれば金庫などの保管が望ましいですが、盗難・火事の被害にあいにくい場所にご保管されると良いでしょう。
書き込めるスペースを設けた譲渡契約書を送付する場合、署名・押印済みで送付することは大変危険です。
相手が好きな条件を書き込み、署名・押印をすれば、その内容で契約が締結されてしまいますので、譲渡契約書の送付時には、十分ご注意ください。
譲渡契約書にて回避できるペットトラブルは、数多くあります。
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