ペットの無駄ほえトラブルの和解に向けて
ご近隣の飼い犬の無駄吠えがあったら?
そして生活に支障が生まれたら?
近所の飼い犬の鳴き声など、周辺の騒音に悩まされる時があります。

飼い犬に関する苦情は21400件にも上り、そのうち約10%は飼い犬の鳴き声の騒音に対する苦情です。(※02年度の東京、横浜、大阪)

ここでは飼い犬の鳴き声の基準と飼い主様への伝え方について、専門行政書士が丁寧にご説明します。

※2017年8月31日更新

この記事が、皆様のトラブル解決につながれば幸いです。


住宅地における騒音規制と犬の鳴き声の比較

ではまず飼い犬の無駄吠えに関して、国ではどの様な基準が設けられているのでしょう

そしてその確認には、飼い犬が飼育される「住宅地における環境基準」が関係します。

この普段私たちが生活する住宅地にも設定されている、環境基準

この環境基準とは、環境省により平成10年9月30日に告知された環境基本法第16条第1項規定に基いた、人の健康を保護する上で維持されることが望ましいとされる基準です。

そしてその中で、私たちが済む住宅地には以下の基準が設けられています。

地域により異なる環境基準

時間別基準値

地域の種類 基準値
昼間(午前6時~午後10時) 夜間(午後10時~翌午前6時)
AA 50db(デシベル)以下 40db以下
AおよびB 55db以下 45db以下
C 60db以下 50db以下
  • AA:療養施設、社会福祉施設などが集合して設置される地域など
  • A:もっぱら住居に利用される地域
  • B:主に住居に利用される地域
  • C:相当数の住居とあわせて商業、工業などに利用される地域
※AAの地域は区域により指定されるため、お住まいの環境局HPをご確認下さい。

道路に面する地域の環境基準

※2車線以上の車線を有する道路

地域の種類 基準値
昼間(午前6時~午後10時) 夜間(午後10時~翌午前6時)
A 60db以下 55db以下
B 65db以下 60db以下

参照:環境省 騒音に係る環境基準について

この様に環境省では区域によって、様々な環境基準を定めています。

その基準は、住居専門地域か工業地域か、時間帯や面している道路の数によも影響します。

では環境基準と比較して、飼い犬の鳴き声は一体どの位のレベルでしょうか。

それに関して環境省の動物愛護管理室には、以下のデータが発表されています。

飼い犬の鳴き声に関する騒音レベル

犬の種類 騒音のレベル 犬の種類 騒音のレベル
シェパード 91db ラブラドルレトリバー 92db
ホワイトテリア 86db シェルティ 85db
ミニチュアダックスフンド 89db 柴犬 86db
ボーダーコリー 84db ゴールデンレトリバー 91db
アメリカンコッカースパニエル 92db ビーグル 89db
ご覧の様に飼い犬の鳴き声による騒音は、時に環境基準値を超えることがあります。

そして飼い犬の鳴き声の届き方は、「家の外 > 家の中 > 家の中央」の順に減少し、鳴き声による騒音は、お住まいの環境によって近隣住民の生活の支障になり得ます。

そして今現在、環境基準は維持されることが望ましい基準に留まり、具体的な罰則は設けられていません。つまり騒音により何かしら処罰を求めることが難しいのが現状です。

そのため飼い犬の騒音問題を飼い主に伝える場合、改善を要望する意見的な意味合いが強くなります。

つまり法的義務の遵守を主張するのではなく、あくまで同じ社会環境を共にする隣人として、適切な騒音レベルをお守りいただきたい!と伝える意味合いが強いと言うことです。

では私たちは、平穏な環境を求めて飼い犬の騒音に関する意見を伝えるべきではないのでしょうか?

その点に関して、犬の飼い主には「動物の愛護及び管理に関する法律」に以下の規定が存在します。そしてこれらの規定が、飼い犬に関する騒音改善要望を主張する根拠となり得ます。

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飼い主が負う犬の騒音に対する責任

では実際に、どの様な規定があるのでしょう。

飼い犬の鳴き声による騒音に対しては、動物の愛護及び管理に関する法律に以下の規定があります。

動物の愛護及び管理に関する法律

第七条 (動物の所有者又は占有者の責務等)

動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない

この様に「努めなければならない」という表現ではありますが、飼い主に対して他者の生活に迷惑を掛けることのように、配慮するべきであると明記されています。

また平成25年9月の改正に伴い、犬の多頭飼育に関して都道府県知事によって飼い主に対する状況改善の勧告・命令が行えるようになりました。

こちらも飼い犬の騒音に関連する問題ですので、ご紹介させていただきます。

動物の愛護及び管理に関する法律施行規則

いずれかに該当するものが周辺地域の住民の日常生活に、著しい支障を及ぼしていると認められる事態であって、かつ、当該支障が、複数の周辺住民からの都道府県知事に対する苦情の申出等により、周辺住民の間で共通の認識となっていると認められる事態とする。

一  動物の飼養又は保管に伴い頻繁に発生する動物の鳴き声その他の音

この様に飼い犬の騒音に対しては様々な規則が設けられており、その規則に沿った飼い主に対する改善要望は、さらなるトラブル予防の役割を持ちます。

つまり罰則規定ではないものの、これらの規則を元に改善要望を出すケースが多いということです。

そして平和的な解決を目指すためには、飼い主に対する伝え方にも配慮が必要です。

ではそれらの配慮について、次項以降で確認しましょう。

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飼い主への効果的な伝え方

まず配慮の一つである、飼い主様への騒音被害の伝え方です。

これらは伝え方次第ではトラブルになる要素を含み、少なからずトラブルの性質を持ち併せているとお考えになられたほうが良いかも知れません。

この飼い主への伝え方にはいくつか方法がありますが、皆様の状況に応じた方法を選択ください。

マンションの管理組合への相談

まずマンションにお住まいの場合は、その管理組合経由で連絡する方法があります。そしてペット可の集合住宅では、以前にも飼い犬の騒音トラブルが起きているかもしれません。

そしてそのトラブルの対処法として設けられたペット飼育細則等があれば、具体的な飼育改善を飼い主に提示した過去もあるかもしれません。

まずは、管理組合にどんな対応をしてもらえるか確認しましょう。匿名の相談として飼い主に直接注意してもらえるならば、直接話し合う必要もありません。

ただ管理組合への相談には、以下の短所もあります。これらはお住まいの管理組合の規模や構成状況によっても、左右されるでしょう。

  • 管理組合の対応には大きな差がある
  • 回覧板や掲示板で注意を促す場合、自分のことだと自覚しづらい
この様な性質から、管理組合経由の連絡だけで解決することは実務上多くないと考えます。

同時に管理組合自体がうまく機能していない場合には、大きな効果は期待できないでしょう。

市役所への相談

各自治体では、市役所などに騒音に関する相談窓口を設けています。無料で相談を聞いてくれ、時には過去の相談例と比較した対処法も教えてくれます。

ただし市役所への相談には、以下の短所があります。

  • 迅速な対応は期待しづらい
  • 一回の注意で終わることもある
  • 相談内容により、たらいまわしになることもある
対応に時間がかかったり、別の窓口につながれ、最初から説明をしなければならないケースも散見されます。

また、窓口自体の相談件数も多いため、個々の丁寧な対応を期待しづらい側面もあります。

自治会への相談

自治会とは、参加自由を基本とする民間団体です。近隣住民による騒音問題なども相談できます。

問題内容に関しては、回覧板形式で各自宅に回されるのが一般的です。ただ、お住まいの地域により体質が大きく異なります。

そのため、その短所にも地域性が現れます。

  • 近隣住民の考え方にも配慮が必要
  • 回覧板や掲示板で注意を促す場合、自分のことだと自覚しづらい
  • 参加だけ求められ、機能していない場合もある

自治会から直接飼い主に注意していただければ、近所の評判を気にするなどの相乗効果も期待できます。

ただ、今後も参加する自治会の場合は、人間関係にも注意が必要です。地区全体の問題に発展した場合、飼い主が孤立する恐れもあります。

保健所への相談

保健所から鳴き声の騒音を指導していただく方法もあります。

事前に犬種や鳴き声の時間帯・大きさなどの騒音に関する情報を伝えると、飼い主に対して具体的な改善方法をアドバイスしてくれることもあります。

ただし、保健所への相談には以下の短所もあります。

  • 保健所の指導には強制力がない
  • 再訪を断られることが多い
  • 保健所によって対応に差がある
保健所から注意された場合には、飼い主が受けるインパクトも大きいでしょう。

また、保健所=殺処分のイメージがあるのも確かで「保健所に連絡された!」と敏感に反応する飼い主も多いため、その利用には注意も必要です。

参照:愛犬が人を噛んだ時の保健所の対応と殺処分の可能性

警察への相談

次に、警察に直接鳴き声の騒音を注意してもらう方法です。

匿名も可能で、迅速に飼い主に事情を確認してもらえます。

ただし警察への相談には、以下の短所があります。

  • 基本は民事不介入であり、具体的な対応は難しい
  • 飼い犬の鳴き声による騒音の場合、動いてもらえない場合もある
  • 「警察に連絡された」という意識を持つ

警察に対応をお願いした場合、後日お話し合いができたとしても、わだかまりが残る場合があります。

直接の平和的な話し合いを検討されているのであれば、控えたほうが良いかもしれません。

内容証明郵便による通達

飼い犬の鳴き声に関する騒音被害を直接伝えたい場合、内容証明郵便を送付する方法があります。

内容証明郵便では、鳴き声の騒音の具体的な改善策を提案することも可能です。

平和的に治める効果的な内相証明の文面には、以下の特徴があります。

  • 静かな時間など、悪い面だけでなく良い点も記載する
  • しつけに対するドックトレーナーを紹介する
  • しつけ費用の半分を負担するなど、譲歩部分も見せる
このように請求だけではなく、柔軟な提案を含めることも非常に効果的です。
一方的に「飼育をやめてください」と言うだけでなく「お互いの生活環境を守りましょう」といった歩み寄る文面にするなど、非常に幅広く活用できます。また逆に「鳴き声による騒音を改善をしてもらえないのであれば、法的処置も検討している」など、強い主張を加えることも可能です。

書面で意思を伝えられる分、今後のお付き合いを考えた文面をじっくりと考えられます。

ただし内容証明郵便には、以下の短所もあります。

  • 実名のため、直接やりとりすることになる
  • 確実に応じられるわけでなく、文面には熟考を重ねなければならない
これらの性質から、内容証明郵便の利用には十分な配慮が必要です。詳細な利用方法は下記をご参照ください。

参照:ペットトラブルでの内容証明郵便の作成方法と送付マニュアル
  :近所の飼い犬の鳴き声・騒音トラブルの具体的な対応方法

飼い主と近隣住民の鳴き声に対する感覚には、大きな差があります。そして、その感覚の差に配慮することで、より平和的な解決を目指すことができるでしょう。

この記事がより平穏な問題解決に繋がれば、幸いです。